ビルゲイツが大学卒業の希望者全員にプレゼントするなど秀逸の宣伝文句で、社会関係で今年一番のヒット本になっている「ファクトフルネス」を読んでみました。
ヒットしているだけあって面白い!医者でありデータサイエンティストである著者による世界の思い込みについて、具体的事例を述べながら解説されています。
この本が秀逸なのは、具体的な思い込みについて暴くだけではなく、人間の心理的傾向についても分析している点です。
人間の10種類の本能と思い込み
下記が思い込みを発生させる、10種類の本能です。
①分析本能
⇒両極端な部分に目が行きがちだが、一番多いのは真ん中である。大半の人がどこに分布しているかを考えることが重要。平均の比較や極端な数字の比較などを実施しよう。
②ネガティブ本能
⇒悪い事と良くなっているは両立する。悪いニュースは広がりやすい。一方、良いニュース、ゆっくりとした進歩はニュースになりにくい。なので悪いニュースが増えても、出来事が増えた訳ではない。
③直線本能
⇒いままでがずっと続いていくように感じてしまう。グラフにはS字や山型など様々な形があることを意識しよう。
④恐怖本能
⇒リスクを正しく計算すること。リスクとは「危険度」×「頻度」の掛け算であるので、行動する前に落ちつこう。
⑤過大視本能
⇒ひとつの数字がとても重要と勘違いしてしまうこと。比較したり1人あたりになおしたりしよう。また80:20の法則を使い、80の部分に目を向けると大幅な効率化ができる。
⑥パターン化本能
⇒パターン化は便利だが、間違わないようにする(間違ったパターンを設定している可能性がある)。違う集団間の違いを探したり、過半数という言葉に注意をして、本質のとらえ間違いをしないようにしよう。
⑦宿命本能
⇒いろいろなものが変わらないように見えるのは変化がゆっくり起きているから。小さな進歩を追いかけよう。小さな変化の積み重ねは年月が経つと大きな違いになって表れる。なので時々知識のアップデートが必要となってきます。
⑧単純化本能
⇒一つの視点だけでは世界を理解できない。時々は自分の考え方を再検証しよう。知ったかぶりはやめよう。また定義をやたらに振りかざすのはやめよう。
⑨犯人探し本能
⇒誰かを責めると他の原因に目が向かなくなる。犯人ではなく原因を探そう。逆もまたいえ、ヒーローではなく社会を機能させている仕組みに目を向けよう。
⑩焦り本能
⇒「いますぐ決めなければならない」と感じる自分の焦りに気づくこと。そんなときは深呼吸をしてデータにこだわろう。過激な対策に注意しよう。
本書を読んで感じたのは、
”世界は、それほどドラマチックではない”
”世界は、それほど単純ではなく、複雑である”
そして、
”世界は、少しずつ良くなってきている。そして少しが集まり続けと年月が経つと、大きな変化となっている”
ということ。
人類のDNAに刻まれている本能。これを客観的にコントロールする術を本書では提示しています。
『ファクトフルネス』から考える投資について
本書では、人間の本能について社会学的に説明をしてみますが、これを投資やビジネス視点で読み解くこともできます。
いくつか感じたことをメモしておきましょう。
・世界は少しずつ良い方向に変わってきているという視点
すでに先進国と発展途上国という分類は過去のものとなり、途上国は数十年前の先進国の暮らしを手に入れつつある。そこには巨大なマーケットが誕生しているという事実。
またこの「少しずつ」というものは複利計算なので、毎年3%よくなると24年でもとの倍になります。これって積立投資と同じ考え方ですね!
・ネガティブ本能に起因する事件による投げ売りが発生するが、実は本業に影響がない場合は戻りがあります。
・直線本能に基づくチャート予測に注意が必要。景気はずっと上がり続けることはないし、ずっと下げ続けることもない。
・単純化本能に基づくバブルの形成。象徴的なのはITバブルでした。IT関係であれば猫も杓子も買われましたが、玉石混交であったことはバブルがはじけた後にわかることになりました。
世界は変わってきているということだけを示した本ですが、行動経済学や心理学的にも面白い1冊でした。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
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