たまにはマクロ的なお話しをということで、Amazonでベストセラーになっていた本として購入しました。
キーワードは1人当たり
本書の9割は、現状の日本の生産性の低さを説いています。日本は世界3位のGDPの国ではあるが、一人当たりはGDPは27位と先進国のほぼ最下位。働かないといわれるイタリアやスペインよりも下、ギリシャより上というレベル。
人口を基にしたデータの場合、高齢化などを理由にしたりもしますが、そのあたりを考慮しても低いのにはかわりありません。
GDPとは人口×生産性で表されます。日本が世界2位のGDPを誇ったのは、人口ボーナスがあっただけと言い切っています。自国で1億2000万人もの人口を抱えていた(それも若かった)からだったと。
ですので著者は「失われた20年」は予測できたことだ、と言い切ります。つまり90年以降少子化がすすみ人口が伸びないなかでは「生産性」を変えない限りGDPの成長は望めないということになります。
確かに「失われた20年」というフレーズは2000年代には「失われた10年」と言われていました。それがいつの間にか20年と伸びている…。つまり「生産性」の向上が行われていないということ…。
ちなみに著者は、生産性について以外にも輸出や技術開発、はてはノーベル賞まで1人あたりとすると世界でも下位に甘んじていると分析します。
すべて1人当たりがキーワードになります。この1人あたりという考え方はアナリスト出身の著者らしいです。株価の判断としてPERやPBRという指標でその銘柄が効率的かお得かどうか図るのと同じです。
それでも変わらない日本
この生産性が上がらない理由を個々の経営者の問題としています。経営者にとってGDPが上がろうが下がろうが関係ないからだと。政府は経営者に「生産性」の向上に努めるように働きかけ、結果、従業員の給料(特に女性)をあげるように働きかけなさいと。
残念ながら具体的な事例はほとんど挙げられていません。しいていうとAI化や電子化とかでしょう。「私の仕事がなくなる!」などという感情論ではなくあくまで客観的に考えることが大事ですね。
著者は、日本の潜在能力はこんなもののはずではない!他の先進国なみに生産性を上げるだけで、GDPは1.5倍の770兆円になると述べています。
ということですが、僕自身は残念ながら日本が変われるとは思いません。日本社会の未来については悲観的にとらえています。明治維新や戦後など本当にどうしようもなくなった時にしか日本は動きません。
ここ最近では力をもつ現在の安倍政権ですら、農協改革や年金の掛け金方式への移行、小さいところでは配偶者控除の廃止をすらできない現状をみているとやはり日本は変化を嫌う国民性です。
こういうこともあって、僕は資産運用は外国株式を主力としています。それぐらいでしか自分の身を守れませんから。
本自体は、2時間もあれば読み切れますので、出張の新幹線の中ででもどうぞ。