本書が面白いは、経済の本質について、その歴史的経緯からわかりやすい言葉で綴られているところ。
特に面白かったのは、「格差」についての述べられている部分。
昨今、世界的に「富むもの」と「貧しいもの」の2極化が進んでいます。色んな映画でも題材となっていますね。
「格差」の原因について、本書では、歴史的に「狩猟」から「農耕」になったことによって、「余剰」をつくることができるようになったことにはじまっていることとしています。
その後、市場社会が到来し、「労働者」「生産手段」「土地」が商品となります。
実はその背景には、航海時代の到来がありました。それは農作物よりも羊毛の方が海外で高く売れるという現実によって、地主は多くの農奴を追い出し、「土地」をわずかな農奴に貸し出し、羊を飼いました。
追い出された農奴は、数十年の間、貧困にあえぎますが、産業革命の到来で、都市部の工場勤務者、つまり「労働者」となります。それは土地に縛られない代わりに、ホームレスになる可能性もある立場となったわけです。
こうしてみると、『銃・病原菌・鉄』を読んだ時みたいに、ある意味必然がつながって、現在に至っているのではと感じてしまいます。
そのほか、借金は、将来実現しそうな交換価値を今に引っ張っていているという考え方や、収容所ではタバコが通貨となった話なども面白かったです。
もう一つ、いつの時代も為政者はその支配公道の正当化しようとしています。過去ではそれは宗教によって権威づけされ、近代以降は経済学などの学問(もしくは民衆の支持)によって権威づけされています。
著者はいいます。
「人を支配するには外の世界を見せないようにするのが一番だ。客観的にみれば、バカバカしさがわかる」
確かに日本しかみていないとこれが当たり前。会社員の世界しか知らないと、そのお金の回り方がすべてと思ってしまいます。
様々な世界があり、それぞれで経済や思考が回っていることに気づくべきなのでしょうね。
面白い1冊でした。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
- 作者:ヤニス・バルファキス
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/03/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)