派手ではなく清貧という言葉がしっくりくる大人の男、松浦弥太郎氏のお金に対しての考え方が書かれた一冊。
お金を「お金さん」として呼んで、友達のような関係になろうというのが大前提。友達として喜ぶことはなにか、嫌がることはなにかという基準に基づいて、行動すると自然とお金が貯まってくるでしょう、という精神的なスタンスが述べられています。
多くのマニュアル本が具体的行動事例を挙げている昨今、こうした具体的事例は普段の生活においては覚えきれず実行されないことが多々あります。
この「お金さんという友達が喜ぶことはなにか、嫌なことはなにか」というものを行動指針にするメリットはあります。
よく言われるお金の3つの使い方、「消費・浪費・投資」ということも、友達であるお金さんが一番うれしいのは投資であり、消費は仕方なく、浪費は悲しむよね、といった具合です。
お金の話から人生の話へ
本書は切り口こそお金についてですが、人生論に通じています。
お金と時間と時間の使い方は、人柄が出ると。
本書ではローマの哲学者セネカの言葉を引用しています。
われわれはわずかな時間しか持っていないのではなく、実はその多くを浪費しているのである。人生は十分に長く、その全体が有効に費やされるのであれば、最も偉大なことも成し遂げられるほどに豊富に与えられているのである。
時間さんと仲良くするには、時間を浪費しないこと(お金さんも浪費は悲しみます)。そして約束は守ること。
お金は夢をかなえるために必要だとしても、時間がないと楽しめません。お金と時間の双方と上手く付き合っていくことが人生が上手くいくポイントになります。
もうひとつセネカの言葉から
われわれは波にもまれながら、あのものからこのものをと掴み、求めたものを捨て、捨てたものをまた求め、欲望と悔恨の間に右往左往している。それはわれわれが全く他人の判断に依存しているからである。
人はそれぞれ違うという前提で、合わせるのではなく社会のルールをわかった上で、貢献していきましょうと著者は述べています。
思うに「お金さん」という友達という設定でいくと、月並みな友達だけどちょっと個性的な友達の方が面白いということは多々あります。もちろん親しき仲にも礼儀ありという言葉通り、最低限のルールはあります。ただやはり個性的な友達の方が話していて面白い、友達も寄ってくる。そんなことなのかもしれません。
マニュアル本ばかりで食傷気味のあなたには、こころ洗われる一冊でした。