ヤフーによるZOZOTOWNの買収、そして前澤社長の退任が発表されました。ビジネス的には、ヤフーのEC事業の強化などという面が強いですが、個人的に気になったのは、前澤氏の考え方です。
モノを作り出す面白さ、転がり始めの面白さを知った人
個人的に引退会見で、興味を持ったのは今後の話の部分です。宇宙旅行の話の後に、新しい事業について触れています。
個人的にもう一個やりたいことがありまして、事業をやりたいです。21年前にZOZO、旧社名のスタートトゥデイですけれども、自宅の六畳一間で創業しました。両親に文句を言われ、一時家中がCDやレコードや洋服であふれることもありました。ただ、その時、自分の手でゼロから一つの事業を作り上げた実感というか、体験が勘当だったのを覚えていて。あの時の感動をもう一度ということで、またどっかの時点で。まだ何をするかも決まってもいませんけど。もう一度ゼロから事業を作って挑戦したいという思いもあります。
まさにLike a rolling stone.ですね。
事業の創成期に味わう感覚をもう一度という訳です。おそらくプレッシャーやら理想やら夢やら不安やらが入り混じったその感覚。21年も前の話ですが、それが忘れられないという訳です。こうした感覚は、思春期の未来にたいする感情と似ています。
前澤氏自身がミュージシャン出身であることを思えば、「ZOZOTOWN」も作品だったのではないかと思えます。愛する作品をどうすればみんなに使ってもらえるか(曲で言えば聞いてもらえるか)という視点をもっていたということなのだと思います。
実際、会見の中で経営手法について、感性的な経営をしていたと述べています。
僕の経営手法というのは、感性に基づく経営手法をとっていました。時代の香りといいますか、におい。みなさんの動きや考え方、雰囲気。そういったものを直感的にかつ野生的に感じ取り、それを経営にいかせないかという経営手法をとってきました。
スティーブジョブズ然り、事業創業期の立ち上げ人にあるタイプの人ですね。事業では、創業期・成熟期・変革期とそれぞれのステージにおいてリーダーの必要な素質が変わります。
会見では次期社長の澤田氏のことは、「僕と正反対の性格」と評するように、成熟期において適任だということで、後任に指名したのでしょう。
引き際をわかっていた前澤氏
伝説になるには引き際が大事です。絶頂で引退するから伝説になるわけです。
芸能界でいえば山口百恵、ミュージシャンでいうとユニコーンこそが理想的な引退パターンでしょう。
絶頂で引退すると、人々は「あの人がまだいたら、もっとすごい世界が広がっていたのではないか……」そう想像する余地を残すことができます。記憶は、素晴らしいまま思い出となります。昔別れたの恋人のように。
ミュージシャンである前澤氏は、そこも分かっていたのではないでしょうか。
ロックな生き方をしたいという前澤氏ですが、引退の仕方もロックでないといけなかったのではないでしょうか。
非常に印象的な会見でした。全文は下記から見ることができます。
ZOZO前澤社長【涙の退任会見全文(1)】「この日が迎えられて大変うれしい」 (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)
ZOZO前澤社長【涙の退任会見全文(2)】「やりたいのは宇宙旅行と事業」 (2/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)
ZOZO前澤社長【涙の退任会見全文(3)】孫会長暴露?「彼女と楽しく生きたい」 (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)
ZOZO前澤社長【涙の退任会見全文(4)】「いかがわしくロックに驚かせたい」 (1/6) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)