最近よく使われるビルゲイツ絶賛の帯がまかれていて、ずっと気になっていた本。
コンテナの普及は、生涯にわたって創造的天才だった マルコム・マクリーンの行動から始まりました。戦前、実際はマクリーンの登場以前からコンテナに積み込んで運搬する発送はあったものの、そこまで効率的なものとは考えられておらず、「箱としてのコンテナ」の活用を実際に大規模に実行し始めたのがマルコム・マクリーンでした。
本書でも書かれていましたが、マクリーンが凄かったのは、発想というよりも、経営者としての洞察力が天才的だったということ。
海運業を船を動かす会社としてではなく、輸送業としてとらえた。
という発想ができていたという時点で時代を大きく先取りをしていました。輸送業としてとらえたからこそ、コンテナの改良・規模の拡大、埠頭の整備、陸運との連携、船の改良・大型化といったことにためらいなく取り組むことができたと書かれていました。
あとから考えれば当たり前だったのでしょうけれども、物事の本質に気づいていたのが天才である所以でしょうか。
そんな天才のマクリーンですら、読み違いをして会社を破産させてしまうほど、コンテナがもたらした社会変革は大きかったというのが、本書のもう一つの要旨になります。
コンテナの普及によりまず勃発した労働問題。コンテナ以前の混載船では沖仲仕(おきなかせ と読むみたいです)が荷物を運びこんでいました。これがコンテナの普及で仕事がなくなり、労使問題が勃発します。
次に港や船の大型化がはじまり、もはや消費地に近い港が有利ということがなくなります。具体的には、マンハッタンからニュージャージー、ポートエリザベスと大規模なコンテナふ頭を整備できる土地に港が移っていきました。
そして一番の社会変革が、輸送コストの低減でコモディのグローバル化が進んだということ。この輸送コストの低減というのは非常にインパクトが大きく、日本、台湾、そして中国が世界の工場になれたのはコンテナ普及による輸送コストの低減があったからこそです。
もちろん輸送コストの低減は、市民も大きく経済的恩恵を受けて現在に至っています。
本書を読んで思うのは、まずマクリーンの行動力。実際アイデアは以前からあったものを具現化した行動力(こうあるべきというものが見えていたのでしょうか)は目を見張るものがあります。その後も事業拡大の段取りのうまさは本書を読んでいて経営者として優れていたのだなぁと感心します。
そして社会変革を起こす一つの方法として、コスト低減というのは強烈なインパクトがあるということ。モノを箱に詰めて輸送するということで、街が栄衰し、世界中がつながるなんて、と思いもよらない規模になったわけですから。